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「ソアリン」感動の飛行体験を支える仕組みとこだわり。ディズニーのフィルム・アトラクションとともに紹介

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2019年7月23日、東京ディズニーシーにオープンした「ソアリン:ファンタスティック・フライト」。

本当に空を飛んでいるかのような体験ができると大人気です。

今回は、「ソアリン」のリアルな飛行体験がどのようにして生まれたのかどんなこだわりが秘められているのか、 ディズニーのフィルム・アトラクションの歴史とともに紹介していきます。

ディズニーのフィルム・アトラクション

「ソアリン」をより良く知ってもらうために、まずはディズニーパークのフィルム・アトラクションの歴史を紹介していきます。

フィルム・アトラクション、つまり映像を楽しむアトラクションのことです。

ディズニーランドは映画のようなテーマパーク

世界で初めて長編アニメーション『白雪姫』や、2019年続編が公開されることで話題の『メリー・ポピンズ』など、数々の映画に携わってきたウォルト・ディズニー。

ウォルトは、映画づくりと同じ発想でディズニーランドをつくりました。

映画は最初から見るものだから、途中から見てしまっては印象が変わる…だから入園ゲートを一つにした、という話は有名かもしれませんね。

ゲストが体験を等しく共有できるこの原則は、後にオープンするフロリダのマジックキングダムや東京ディズニーランド等でも共通ですね(現在はエプコットや上海ディズニーランドなど、入園ゲートが複数あるパークもあります)。

パークから外の現実世界が見えないように設計されているのも、映画館の暗闇と同じですね。

メインストリートUSAの建物が実際よりも高く感じるトリック(2階の窓を小さく、天井を低くつくっている)も、映画のセットで用いられるものです。

 

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来園する客(ゲスト)の目にするもの全てをショーと捉え、乗り物はもちろん建物や植物までもが物語を作る舞台装置になっています(テーマショーと呼ばれる演出ですね)。

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ディズニーランドはごくありふれた遊園地(アミューズメントパーク)ではなく、映画のように物語を体験ができる、イマジネーションあふれるテーマパークになりました。

そんな映画のパークともいえるディズニーランドには、数々のフィルム・アトラクションが登場することになります。

大人気だった360度スクリーン

1955年の開園当初から、多くのゲストが注目したフィルム・アトラクションが映画劇場「サーカラマ」でした。

「サーカラマ」とは、”サークル”×”パノラマ”。円形シアター内の全周にスクリーンがあり、360度映像が楽しめたのです。

当時360度スクリーンはとても珍しく、前を見ても横を見ても後ろを見ても映像が楽しめるという臨場感で、ものすごい反響だったようです。

観光旅行映画「ツアー・オブ・ザ・ウエスト」や「アメリカン・ビューティフル」が上演されました。

後にシステムが改良されてサークルビジョンと呼ばれるようになり、フロリダ・東京・パリのパークにも導入されました。

東京ディズニーランドでは、「マジックカーペット」、「ビジョナリアム」が上映されました(今は「バズ・ライトイヤーのアストロブラスター」がある場所です)。

パリのパークのために作られ、日本でも大人気だった「ビジョナリアム」。今でも根強いファンが多く、また体験したいと願う人は多いです。

3Dアトラクションの成功

1980年代には、3Dの技術が大きく進化しました。

ディズニーランドでは、マイケル・ジャクソン主演の「キャプテンEO」が3Dのフィルム・アトラクションとして上映されました。

サークルビジョンとは異なる形で臨場感を提供できた3D技術は世界のパークに広がります。

1990年代に「マペットビジョン3D」や「ミクロアドベンチャー!」、「イッツ・タフ・トゥ・ビー・ア・バグ!」が登場、ディズニーパークに3Dアトラクションは欠かせないものになりました。

ディズニーパークのフィルム・アトラクションは、時代とともに進化してきたのです。

「スター・ツアーズ」もまた、映像を使ったアトラクションですね。リニューアルで3D映像や何パターンものシナリオが楽しめるようになりました。アトラクションの進化は止まりません。

「ソアリン・オーバー・カリフォルニア」の誕生

ディズニーパーク初のアイマックス・アトラクション

前置きが長くなりましたが、いよいよ「ソアリン」の話です。

2001年2月にオープンした、カリフォルニア第2のディズニーパーク「カリフォルニア・アドベンチャー」。


今はディズニー・ピクサー映画『カーズ』の世界が広がる「カーズランド」や、ピクサー映画がテーマの遊園地「ピクサー・ピア」などが人気ですが、開園当時はカリフォルニアの歴史や文化を題材にしたテーマパークでした。

このパークの目玉アトラクションの一つとして、カリフォルニアの風景を空から楽しめるアトラクション「ソアリン・オーバー・カリフォルニア」が誕生したのです。

「ソアリン」は、パークのアトラクションで初めてアイマックス※が導入されたアトラクションでした。

※アイマックスは、カナダのIMAX社が開発したフィルム・システム。高精細度の映像を、巨大なスクリーンで楽しめる。「ソアリン」ではオムニマックス(半球スクリーンに映像を映写する)システムが使用されました。

「ソアリン」のリアリティへのこだわり

ソアリン(Soaring)とは、「舞い上がる」という意味です。

風に乗って舞い上がるかのように、カリフォルニア上空を飛行する体験が楽しめるというアトラクションでした。

「ソアリン」の飛行体験を支えているのは、数々のこだわり。

  • 圧倒的な臨場感をもたらす超巨大スクリーン
  • 吊り下げ式の座席(足が宙ぶらりんに)
  • オレンジ畑の上空を飛ぶ場面では、オレンジの香りが漂う
  • 優しく吹く風
  • 壮大な音楽

徹底したこだわりで、ゲストは本当に空を飛んでいるかのような没入体験ができました。

今までにないリアルな体験が楽しめる「ソアリン」は、フィルム・アトラクションの一つの集大成といえるでしょう。

後にフロリダのウォルト・ディズニー・ワールドのエプコットにも作られ、「ソアリン」は両パークで高い人気を誇りました。

「ソアリン」は世界旅行バージョンへ

上海ディズニーランドのオープンと新しい「ソアリン」

2016年6月16日、世界で6番目となるディズニーリゾート、上海ディズニーリゾートがオープンしました。

「カリブの海賊」や「トロン・ライトサイクル・パワーラン」など最新技術を導入したアトラクションが導入された上海ディズニーランドに、新しい「ソアリン」が登場したのです。

「ソアリン・オーバー・ザ・ホライズン」は、カリフォルニア上空を飛んだ従来の「ソアリン」とは異なり、なんと世界各国の名所を巡る世界旅行バージョンに!

映像は高画質化され、さらにリアルな飛行体験を味わえるようになりました。

風や匂いといった特殊効果も健在です。

カリフォルニアとフロリダの「ソアリン」も、上海版に合わせて世界旅行バージョンにリニューアルしました(名称は「ソアリン・アラウンド・ザ・ワールド」)。

そして2019年7月23日、東京ディズニーシーにソアリンがオープンしました。

「ソアリン」で使用される映像は、特別なカメラを吊り下げたヘリコプターで世界各国の名所を空撮したんですね。

カリフォルニア・フロリダ・上海・東京 それぞれのソアリン

世界に4つの「ソアリン」が存在するわけですが、実は全く同じアトラクションではなく違いがあるんです。

例えばアトラクションの外観・ウェイティングエリアは、

  • カリフォルニア…飛行機の格納庫
  • フロリダ…未来的な空港風
  • 上海…神秘的な天文台の遺跡
  • 東京…博物館

というように、「ソアリン」があるエリアに合わせた雰囲気になっています(これがテーマショーですね)。

 

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同じ”ジェットコースター”でも「ビッグサンダー・マウンテン」と「スペース・マウンテン」、「レイジング・スピリッツ」がそれぞれ異なる見た目・ストーリーを持っているように、世界の「ソアリン」も個性が出ているんですよね。

アトラクション本編の映像についても、基本的には同じなのですが、終盤に違いがあります。

  • カリフォルニア…ディズニーランド上空を飛ぶ
  • フロリダ…エプコット上空を飛ぶ
  • 上海…上海上空を飛ぶ
  • 東京…東京&東京ディズニーシー上空を飛ぶ

この辺りのこだわりもまた素晴らしいです。

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東京ディズニーシーの「ソアリン」

博物館で開催される、カメリア・ファルコの特別展

先ほど触れたように、カリフォルニア・フロリダ・上海それぞれの「ソアリン」で外観・ウェイティングエリアやクライマックスが異なりますが、東京ディズニーシーの「ソアリン」にも、オリジナルのバックグラウンドストーリーが用意されました。

メディテレーニアンハーバーの丘に、空を飛ぶという人類の夢を称える特別な博物館、ファンタスティック・フライト・ミュージアムがあります。今日この博物館では、飛行の研究に情熱を注ぎ、未来を夢見て努力し続けた女性、カメリア・ファルコの人生を振り返る特別展が開催されています。

博物館を訪れたゲストは、さまざまな展示物を見ながら館内を巡り、カメリアの功績を称える特別展のギャラリーに入ります。そこでゲストは、カメリアのスピリットとの不思議な出会いを体験し、最後にはカメリアが仲間とともに開発した空飛ぶ乗り物、ドリームフライヤーに乗り込みます。

「イマジネーションや夢を見る力があれば、時空を超え、どこにでも行くことができる」と信じていたカメリア。その思いが込められたドリームフライヤーとゲスト自身のイマジネーションや夢を見る力が、ゲストを壮大で爽快な空の旅へと誘います。

【公式】ソアリン:ファンタスティック・フライト|東京ディズニーシー

舞台となるのは「ファンタスティック・フライト・ミュージアム」という博物館。

 

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メディテレーニアンハーバーの街並みとも馴染む外観の博物館では、飛行の研究に情熱を注いだカメリア・ファルコの特別展を開催している…という背景です。

カメリアはS.E.A※のメンバー。かなり緻密で奥が深いストーリーになっています。

※「Society of Explorers and Adventurers」。探検家や冒険家たちが所属する、架空の団体。世界のディズニーパークにはS.E.Aメンバーゆかりのアトラクションなどがあり、シーの「タワー・オブ・テラー」における重要人物・ハイタワー3世もS.E.Aの一員である。

「ソアリン」は、シーの新しい目玉アトラクションになり得るか

「ソアリン」は、「トイ・ストーリー・マニア!」や「ニモ&フレンズ・シーライダー」のように人気の映画がもとになったアトラクションではありません。

「タワー・オブ・テラー」のようなスリリングな体験ができる絶叫ライドでもありません。

4D映画やVRゲームなどが普及し、一昔前よりも非日常が身近になってきた現代では、「巨大なスクリーンで世界の名所を空撮した映像を見るアトラクション」というだけでは大して魅力を感じられないかもしれません。

でも、ディズニーの「ソアリン」はそれだけではないということを、この記事を読んだ皆さん、あるいは既に「ソアリン」を体験した皆さんならご理解いただけるのではないでしょうか。

リアリティへの徹底的なこだわりが詰まった、ディズニーパークでしか味わえない飛行体験。

そして東京ディズニーシーの「ソアリン」は、特に”ストーリー”に力を入れています。

 

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並んでいる間は数々の展示に没入でき、

カメリア・ファルコの情熱に心を惹きつけられ、

アトラクション本編では空を飛ぶ感覚を全身で感じられる…!

きっとこれから何年も、大勢のゲストに愛されるアトラクションになることでしょう。

  • 『ディズニーファン5月号』第12巻第6号、講談社、2001年。
  • 柳生すみまろ『柳生すみまろのディズニーランド誕生秘話』講談社、2011年。